7月末の月次レポートを集計していたとき、チームは少し不思議な数字に気づいた。体重が減っているのに、体脂肪率が上がっている会員が全体の約41%いたのだ。体重計の数字だけを見れば「夏は痩せやすい」という印象になるが、実態はむしろ逆だった。失われていたのは脂肪ではなく、筋肉だった。この記事では、Dex CoreBlendが80名の会員データから読み取った夏の体組成変化のパターンと、除脂肪体重を維持するために実際に有効だった対策を、できる限り具体的な数字とともに紹介する。感覚論ではなく、手元のデータから出発した話をしたい。
集計の概要:何を、どうやって測ったか ¶
対象は2024年5月から7月末までDex CoreBlendに継続在籍していた会員80名(男性47名、女性33名、平均年齢34.2歳)。測定にはInBodyの業務用モデル(InBody 270)を用い、月1回の定期測定を義務づけていない会員については、月内に最低1回の記録がある場合に限りデータを採用した。欠損月のある会員は集計から除外したため、当初の登録数より母数が絞られている。体組成の主要指標は除脂肪体重(SMM:骨格筋量)、体脂肪量、体脂肪率の3つ。期間中の平均気温データは気象庁の公開データ(東京都・千代田区)を参照した。
夏に何が起きていたか:除脂肪体重の変化率 ¶
5月から7月にかけて、80名の骨格筋量(SMM)は平均で0.8kg減少していた。一方、体脂肪量の変化は平均マイナス0.3kgにとどまり、体重の減少分の大半が除脂肪体重から来ていた計算になる。性別で見ると、男性の平均SMMは1.1kg減、女性は0.4kg減と差があった。トレーニング頻度別に見ると、週3回以上継続した会員(28名)のSMM減少は平均0.2kgだったのに対し、週1回以下に落ちた会員(21名)では平均1.6kg減と、8倍近い開きがあった。これは夏の体組成悪化が「暑さそのもの」よりも「トレーニング頻度の低下」と強く相関していることを示唆している。
なぜ夏はトレーニング頻度が落ちるのか ¶
チームが7月中旬に実施したアンケート(回答者62名)では、頻度低下の理由として「疲労感・だるさ」が最多で全体の54%を占めた。次いで「外出そのものが億劫」が31%、「スケジュールの乱れ(旅行・帰省等)」が28%と続いた。注目すべきは「食欲の低下」を挙げた会員が23%いた点で、このグループはたんぱく質摂取量の自己申告値も低く、SMMの減少幅が他のグループより平均0.5kg大きかった。暑さによる食欲不振がたんぱく質不足を招き、それが筋肉減少を加速させるという経路が、データの上でも一定程度裏付けられた形だ。
除脂肪体重を守った会員に共通していた3つの行動 ¶
7月末時点でSMMが5月比プラスマイナス0.1kg以内に収まっていた会員は22名いた。このグループを詳しく見ると、3つの行動が共通していた。第一に、トレーニング時間を短縮しても頻度は落とさなかった点。平均セッション時間は5月比で約17分短くなっていたが、週あたりの来館日数はほぼ変わっていなかった。第二に、たんぱく質の摂取を意識的に「食事以外」でも補っていた点。プロテインシェイクを活用している割合がこのグループでは72%と、減少グループ(38%)を大きく上回った。第三に、測定日を自分でカレンダーに入れていた点。自己モニタリングの習慣が継続の錨になっていた可能性がある。
食事面の具体策:夏の低食欲下でたんぱく質を確保する ¶
食欲が落ちている状態でたんぱく質目標量(体重1kgあたり1.6g前後が一般的な推奨値)を固形食だけで達成しようとするのは難しい。チームが実際に効果的だと確認した方法のひとつは、ギリシャヨーグルト(無糖、100gあたりたんぱく質約10g)を朝食に組み込むことで、食欲がない朝でも摂取しやすい。冷製の豆腐や枝豆なども同様に夏向きの選択肢だ。また、プロテインシェイクを「水」ではなく低脂肪牛乳(200ml)で溶くだけでたんぱく質量が約7g増える。このような小さな積み上げが、1日の合計量を目標に近づける。
トレーニング面の具体策:頻度を守るための設計 ¶
データが示した最大の示唆は「強度より頻度」だった。特に夏場は、セッションを短くしても週に体に刺激を入れる日数を維持することが筋量保持に直結していた。具体的には、通常60分のセッションを夏季限定で40分に圧縮し、種目をビッグ3(スクワット、デッドリフト、プレス系)を中心に絞るという設計が現実的だ。また、早朝や夜間など気温が低い時間帯に移行した会員は、来館頻度の維持率が日中帯の会員より高かった。22名の「維持グループ」のうち、時間帯を意図的に変えたと回答したのは14名(64%)に達した。
このデータの限界と、次に調べたいこと ¶
80名という母数は統計的に強固な結論を出すには小さく、今回の集計はあくまで探索的な記述統計にとどまる。食事データは自己申告であり過小報告のバイアスが避けられない。また、在籍会員はそもそも健康意識が高い層に偏っているため、一般集団への外挿には慎重であるべきだ。次のステップとして、チームは8月から10月にかけての秋口データとの比較を計画している。「夏に落ちた筋肉は秋に戻るのか、それとも低い水準で固定されるのか」という問いが、次の集計で見えてくるはずだ。
夏が「痩せやすい季節」という感覚は、体重計だけを見ていると生まれやすい。だがDex CoreBlendの80名のデータが示したのは、落ちているのが主に筋肉だという、少し不都合な事実だった。頻度を守ること、たんぱく質の経路を増やすこと、自分の変化を数字で追うこと。派手な解決策ではないが、データはそこに繰り返し収束していた。